* それを、失くさないために。


【 あ と が き 】 (短篇の後書きのクセに長いったら。)


この秋、転勤しました。
スージョンみたいに私はエリートではなく、ただの子会社の末端社員ですが。

そんな転勤で溜まったストレスの解消に、何か自分に近い設定の人物を主役に据えて話を書いてみよう!と思ったのがこのお話を書くことになったきっかけです。
最初は30女が主人公の独立したただのショートショートを書こうと思ったのですが、私の悪い癖である「話を短くまとめることが出来ない病」が発動し、設定をノートに書き出しているとどんどん物語が伸びていき、短篇の長さに…。そこで、どうせ書くなら自分の長編話のスピンオフ作品として、誰か登場人物で近しい設定のキャラに当てはめて書いてみよう、と考えなおしました。
それが、これです。
このお話の元の作品はまだ書いていないのですが(笑)、年内には手を付けようと思っている長編「ここには愛なんて存在しない」という物語です。こちらの主役は今回のお話にもちょろっと登場した、筑濱六子と庄司立
(しょうじりつ)という少年のふたり。これも、仕事や将来の夢に悩む大人の青春小説です。

アラサーになって青春を気取るのは少々図々しいような感じで気が引けますが、実際の年齢という数字とは違っておとなになり切るのって、難しいことだと常々感じています。
子供の頃に見た夢を叶えた人も、そうでない人も、30歳になってから先の将来展望・夢って、どうやって見ればいいのか。会社経営者などで開けた夢を持って居る方もいれば、ただの雇われサラリーマンの大人としての夢って何を設定すればいいのか。
そんなことを考えて、そんな悩みをどうにかしたくて、この話を書こうと思いついたわけですね。

最初に考えた六子が主役の本編の設定では、スージョンは「本社から来た愛想のいいイケメンのエリート」という立ち位置でした。
少女漫画で言うところの、いわゆる「王子キャラ」的ポジションです。
でもこの短篇に彼を引っ張り出して来て、彼の内面を考えたとき「本社から地方の子会社に出向になったエリートが本心からにこにこして接しているわけないだろ!」と、彼の葛藤部分を考えざるおえなくなりました。(笑)
もちろん、今回のお話には作者や作者の周りで実際に起きたエピソードがふんだんに、そりゃもうかなりの割合でふんだんに盛り込まれているわけですが、親会社が子会社の人間をバカにしている…という描写は、私が現実で逆の立場のため出来るだけ避けたかったし(笑)、在日三世設定だったスージョンが自分も苦労しているはずなのにそんなことするわけない!という王子キャラへの偏見もあり、イライラの根源を主にライバルである後輩に持っていくことに。お陰で、スージョンがぜんぜんエリートっぽくなくなってしまいました。ただのイライラしてるクズ社員みたいに…(涙)
でもきっと、ちょっと離れた生産課の六子から見れば、憧れのエリート社員には見えるはずなんですよ!! 彼の内面は、見えない訳ですからね。ハングルで書き殴ってたけど。

ちなみにこの後輩、塩谷大逵にはモデルが居ます。作者の3つ下の後輩Kです。マジで彼はすごい。塩谷の数々の功績は、ぜんぶKから拝借しました。こういう人間も、居るんですねー。(遠い目)
私はモデルが居ないとキャラを定められないタチなので、木嶋祥次にも前田今日子にも小山内佳代にもモデルが居ます。ぜんぶ、会社の人たちです。彼らから、名前も一文字だけ拝借しました。そして、いちばんふわふわしていたスージョン。この人のモデルも、書くと決めてから会社で探し出しました(笑) 条件は、イケメン・にこにこ・物腰やわらかい。幸い、うちの会社は人数だけはたくさんいるので、割とすぐに決まりました。モデルは後輩・Tくん。30歳・まあまあ長身・いつも笑顔・メガネ・顔にホクロが多い・口調がエリートっぽい(自分のことを「僕」とか「自分」でなく、「私」と喋る)な人です。

最後、悩んだのはタイトルでした。私はタイトルを決めるのが苦手なんですが、タイトルっていちばん重要でしょう。人様が気になるフレーズでなければならないし、テーマを端的に表してなければならない。考えた末、スージョンのいちばん葛藤しているものは何か?ということで、それをタイトルに出しました。それを、失くさないために。それ、とは何か。あなたが、働く理由の根源になっているものですよ。

長々と、失礼しました。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。
スージョンと同じく、働く世代のみなさまの心に何かしらの満足感をちょこっと残せられていたら、嬉しいです。

2015年10月16日 サワムラヨウコ


 

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